不登校になった生徒さんの多くは、生活リズムが崩れてしまいます。もちろん、学校に通っていた頃のように、朝起きて夜は早くに寝る、といった模範的な生活を維持できる人もいるでしょう。しかし多くの人は、いわゆる昼夜逆転の状態になってしまうようです。
原因はいろいろ考えられます。
そもそも、その日の予定がなければ誰だって早起きはしにくくなります。これは大人になってもそうでしょう。学校、仕事や家事など、やらなければいけない予定があるからみんな頑張って朝起きているのです。それが毎日続いているから朝きちんと起きるという習慣が保たれているのだと思います。
学校に行けなくなると、その習慣を維持する必要がなくなってしまいます。ただでさえ気持ちの上で落ち着かず不安定になっている時期です。そのまま朝起きにくくなることは、良くあることなのです。
また、朝という時間帯に起きていることが精神的につらい、ということも考えられます。朝は家庭も近所も慌しく動き出す時間です。親、兄弟は出勤や通学のために準備を始めます。自分は不登校で家に残るのに、「いってらっしゃい」、とそれを見送るのは、居心地の悪さを感じてしまいます。
さらに朝起きていると、外からは通学途中の子どもたちの声も聞こえます。本来はその中に自分もいなければいけないと思っている声です。なんとなく罪悪感や後ろめたさを覚えるかもしれません。不登校になってしばらくは、朝感じる周囲の雰囲気がしんどいと言う人もいるのです。
夜は夜で、布団の中に入り寝る準備をするといろんなことを考えてしまい、なかなか寝付けなくなってしまうことがあります。目をつぶりじっとしていると、これからどうなるのだろう、明日はどうすればいいのだろう、と不安になることもあるでしょう。ネガティブなことばかり考えて、自分を責めたりするかもしれません。
逆に静かになった深夜だからこそ、安心できることもあるかもしれません。家族と顔を合わす心配もなく、周囲の顔色をうかがう必要もありません。自分の時間を作れたような気になります。また本来、寝ていなければいけない時間帯に夜更かしをしていることは、非日常的な体験で、そのことで現実から目を逸らしていられる、という人もいるかもしれません。
このように考えてみると、不登校なった生徒、とりわけ不登校になりたての生徒は昼夜が逆転する動機がたくさんあることに気付きます。ご家族が、「学校に行かなくても、せめて生活リズムだけは崩さないようにしようね。」と言っても、それができる子と、難しい子がいるのです。
落ち着いてから、どのように生活リズムを整えていくのかという問題は、また別の問題としてあります。今後のことを考える場合、ご家庭の方針として、厳しく叱ってでも早寝早起きをさせるということも、一概に間違ってはいないと思います。
ただ、いずれの場合でも忘れないでいただきたいのは、多くの不登校の子どもたちにとって生活リズムを維持し続けるのはとても難しいということ。そして生活リズムを維持し続けることも、また昼夜が逆転してしまったとしても、どちらも精神的にはしんどいということです。
不登校になった以上、自分はこんな状態でいいのだろうか、という不安はどのような生活を送っていても感じるものだと思います。